シュガーレスキス
「菜恵ちゃん、無駄な時間過ごしてるね。馬鹿らしい……」

 コミケ仲間の健太がほつれた布を丁寧に繕いながら、そう言った。
 私達は仲間の部屋を順番に回って、コスプレ用の服を縫ったりオタク話をしたりして盛り上がる。
 皆それぞれ仕事をちゃんと持っていて、外では全くオタクの気配すら感じさせないタイプばかり。
 今言葉を発した健太だって、普通の爽やか営業マンだし、特定のアニメの女性キャラに命をかけてるなんて、言われても信じられない人が多いに違いない。
 今日は他のメンバーが集まらなくて、たまたま健太の部屋に私一人がよせてもらっていた。

「馬鹿らしいかなあ。健太は言えるの?自分の彼女にアニメオタクですって」
「言えるよ。その部分を認めてくれない人は選ばない」

 彼の意見は非常にシャープですっきりしている。

 そりゃね、確かに私が好きなジャンルを否定する人なら好きにならなくていいわけだよね。
 第一、聡彦は別に私の趣味を嫌っているふうでも無い。
 単に私を束縛する脅しの材料として、それを握ってるわけで。

「じゃあ私がコンタクトとるの止めれば、彼とも本当に終わっちゃうのか」

 独り言みたいにつぶやいて、私は自分のネイルアートを仕上げるのに必死になっていた。
 インドアでこうやって自分のやりたい事をただ仲間とやってるだけで、私は幸せだ。
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