シュガーレスキス
「菜恵ちゃんさあー。言ってる事めちゃくちゃだよ。脅迫されて付き合ってる男が好きだっていうのも訳分からないし、その男が自分から去るのが悲しいとか言ってるのもおかしい」

 健太はしごくもっともな事を言った。
 そうだ、おかしいのは聡彦だけじゃない。私もだ。
 奴隷になることに甘んじていて、鎖を外してもいいよって言ってもらってるのにその鎖を自分からは解こうとしない。

「結局菜恵ちゃんはその男に愛されたいんでしょ?心から愛してくれてるっていう証拠が欲しくて悩んでるんでしょ」

「愛して欲しい。うん、そうだね。玩具みたいに扱われるんじゃなくて、愛されたい……そういう感じ」

「なら愛してるって言ってみたら。そういうツンデレにはダイレクトに迫ってみるといいよ。下手に駆け引きしようとすると足すくわれるから。歪んだ人間にはストレートに攻撃。これがいい」

 人間観察を日々重ねているせいで、健太に物事を相談するとすごく単純に答えが返ってくる。
 そういう健太が誰かを好きだとかいうのは聞いた事が無いから、アニメの女の子で満足してるのかもしれない。

「私から言うの?言われたかったのになー」
「無理じゃん。今聞いた感じでも、まあ例えそいつが菜恵ちゃんを死ぬほど好きだったとしても追いかけてきたりしないね。強情張って、最後までカッコつけるタイプだ」

 見てもいないのに、よく聡彦の事が分かるなあと感心する。
 確かにあの人には駆け引きは通用しない。
 嫌いなら去れば……って言われた訳だし。

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