シュガーレスキス
 私はゆっくり立ち上がって、情けないところを見られたな……と思った。
 彼には二度とこんな顔見られないようにしようと思っていたのに。

「違うんです。彼は全力で大事にしてくれてます。ただ、私が不安定なだけで……」

 そう言いかけたところで、如月さんは私の体をグッと引き寄せて抱きしめてきた。

「俺のところに来い。こうやって泣かせたり絶対しない……一生君の笑顔を守るから。あの男を愛したままでいいんだ……これ以上ストレスで君が弱るのを見るのは嫌だ」

「きさ……らぎさん」

 どうしてこの人は、こんなにも私を思ってくれているのだろう。
 聡彦が私を思ってくれたのと同じぐらいの強さを感じる。

 もうこの人を頼るのは止めようと思っていたのに……。
 胸の中でホロホロと涙が出るのを止める事ができない。

「菜恵?」

 ガサリと草むらを歩く足音がして、聡彦が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 ハッと我に返って後ろを振り返ると、そこには青い顔をした聡彦が立っていた。

 彼は時々時間休をもらって私の様子を見にアパートに戻ってくれる。
 今日は出かける前には何も言ってなかったのに急に顔でも見たくなったのだろうか……タイミングが悪過ぎる……。

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