シュガーレスキス
「そうやってれば普通の女に見えるんだけどな」

 指定された洋風居酒屋に入るなり、聡彦がワイン片手にニヤッとした。
 会社では絶対見せないこの悪魔な顔。
 今日も私をどう料理しようか計画を練ってきたに違いない。

「いつも普通の服だよ!あの日はたまたま趣味の日だったから」

 私は飲んでもいないのに、赤くなって言い返しながら聡彦の隣に座る。

「趣味ねえ。いい趣味だよね、24歳の女性が金髪のカツラかぶってコスプレしてるなんて」
「言わないで!!」

 私は思わず彼の肩をバシッと叩いてしまった。

 そう、彼が握っている私の弱みというのはズバリ私が「オタク」だという事だ。
 アニメが何より好きで、ファンになったアニメのキャラクターになりきってしまうコスプレっていうのを時々仲間で集まってやったりする。
 これは本当に親にも内緒にしている事だから、当然会社でも知られたくない。
 受付嬢として、一応上品で綺麗だっていう事を売りにしているんだから。

 なのに、私はコミケの帰りに偶然聡彦に出くわしてしまった。
 着替える場所まで移動する間の短い距離だったけど、公の道路を歩いた。
 その時本当に偶然彼が通りかかった。
 最初誰だか分からなかったみたいで、珍しいものを見るような目で私達をジロジロ見てたんだけど、そのうち私と目が合った。
 少し怪訝な顔で、2・3秒私を凝視していた。
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