シュガーレスキス
 でも、洗面所のコップに並ぶ青と赤の歯ブラシ。
 こういうのって本当に同棲してんのかなって気分になる。

 半同棲ってやつか?

 とにかく、菜恵を夢中にさせておくにはどうしたらいいかという事は仕事に没頭する時以外はずっと考えていて。

 言葉ではどう表現していいか分からないから、出来る限り俺は行動でそれを表現する。
 これを言うと菜恵は怒る。

「それって、ただのエッチな男の理屈でしょ!」

 パジャマを脱がそうとすると、必ずこう言われる。
 まあ、別にそう思ってもらってもかまわない。あながち嘘でもないし。
 俺は菜恵にだけ特別欲情する男だから、菜恵にとっては相当いやらしいって事になる。

「間違うなよ、菜恵意外の女とはこんな事した事無いんだからな」

 こんな言い訳をしてしまうほど、自分の行動が実は恥ずかしかったりする。
 女性の体に触れるなんて、それほど機会は無かった。
 おまけに菜恵ほど好きな女は初めてだし、キスだけでもずっと満足だった。
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