シュガーレスキス
「甘い匂いがする」

 夜、キスをしようと口を近づけた聡彦が唐突にそんな事を言った。
 私は驚いて体を離す。

「何で逃げる?」
「だって……何か変な事勘ぐってるから」

 私は夕方に寄り道して食べたアイスの味がまだ口に残ってるなんてあるわけないのに、それが気になってちょっと挙動不審になっていた。

「……菜恵。何か隠してるだろ」
「してないよ」
「お前は嘘つく時目線そらすから、すぐ分かるんだよ」

 さすがストーカー並の観察眼。
 私の行動心理まで読めているらしい。

「ルール違反したんだな?全部本当の事を言えば許してやる」

 結局この人は、こうやって俺様な態度を崩さない。
 正直に言わないと、嘘がバレた時の方が怖い。
 そう思って、私は素直に八木さんと仕事帰りにアイスを食べたと言った。

 聡彦の顔色が変わる。
 やだ、怖い。
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