あの夏の季節が僕に未来をくれた
夕食の時間――


母が今朝言った通り、珍しく食卓に父の姿があった。


父に会うのはいつ以来なんだろう?


もしかしたら四十九日の時が最後かもしれない。


そう思うと、俺がほとんど部屋に籠っている間、母は一人ぼっちの夜を過ごしていたのだろうか?


自分ばかりが孤独なのだと思っていたけれど、母もまた孤独だったのかもしれない。


「お帰り、父さん」


そう声をかけると、こちら側を背に座っていた父が、ビールを片手に振り返った。


「おぉ、雅紀!ただいま
久しぶりだな?」


久しぶりというフレーズがいやに耳に残る。


親子の間で、こんなに躊躇なく久しぶりなんて言えるなんて……


だけどそれほど弟が死んでからの親子関係は希薄だった。


その証拠に、父を前にして俺は少なからず緊張している。


他の父と息子がどんな会話をするのかなんて、見たことがないからわからない。


だけど俺と父のそれは、明らかによそよそしい関係だった。


弟には軽口をたたく父も、俺には少し距離を持って話していたように思う。


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