あの夏の季節が僕に未来をくれた
「先生、こんにちは」


笑顔を作り、そう言ってドアを後ろ手に閉めた。


それからずんずんと彼女の方へと近付いていく。


何も言えずに固まっていた彼女は、俺が目の前に立ったのを見て初めて、ハッとしたように俺を見上げた。


「青木……くん

どしたの?3年生は部活ないよね?」


ようやくそれだけ言うと、素の顔から先生の顔に表情を変える。


それは俺への……というより兄貴への軽い拒絶だと思った。


兄貴の口からもう俺の話を聞きたくないという防御。


俺はそんな防御を打ち砕くように、話しかける。


「うん、先生に会いに来た」


「……」


今度ははっきりとした拒絶だった。


無言で俺を睨み付ける。


それから諦めたようにフッと息を吐くと、投げやりな様子で言葉を放った。


「また弟くんの話?

思い出話なら、よそでやってくれないかな?」


……すみれちゃん?


ほんとに彼女なんだろうか?


俺の知ってる彼女は、少なくてもそんな風に投げやりに言葉を吐き捨てるような人間じゃなかった。


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