あの夏の季節が僕に未来をくれた
あの時と違って、ここの生徒であることが、躊躇なく校舎の中へと足を進めることが出来た。


すみれちゃんに連れられて保健室まで引っ張って行かれたのは、ちょうど二年前の夏のことだ。


そこで彼女と唇を重ね、細い体を抱きしめた。


彼女の柔らかな感触も、少し高めの可愛い声も、甘い匂いも。


俺を興奮させる条件は全部揃っていて。


だけど愛しすぎて強引には何も出来なかった。


一番大好きな彼女に嫌われることだけはしたくなかったから。


保健室に辿り着くまでに、生徒や先生とすれ違うことはなかった。


しんと静まり返る廊下からは、遠くの方で部活動をする生徒の掛け声がするだけだ。


大きく深呼吸して、保健室のドアを開ける。


ガラッと鈍い音が響いて、古いそれは開いた。


奥の机に向かい、何かを書いていた彼女が、驚いたようにこちらを見る。


久しぶりに見た彼女は、兄貴が言った通りかなり痩せていて。


やつれたように見える。


それもこれも全て自分のせいなんだと、俺は胸が傷んだ。


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