あの夏の季節が僕に未来をくれた
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「このことは誰にも言わないでおくから……

あんまり気にするんじゃないよ?

きっと弟さんが亡くなって、精神的に不安定だったんだろう……

家に帰ってゆっくり休んだ方がいい」


管理人さんの言葉を、どこか遠くの方で聞きながら、俺は管理人室を後にした。


お礼を言ったのかさえ、わからないほど、俺は動揺していた。


あんなになるまで壊すほど、俺は弟を恨んでいたんだろうか?


なにより、俺は自分の知らない“俺”がいることがすごく……怖かった。


フラフラしながらエレベーターへと向かう。


9階のボタンをかろうじて押すと、俺は壁に寄りかかった。


(なんなんだ?いったい、何が起こってる?)


冷静にならなくちゃと必死に自分を抑えながら、でも先ほどの映像が頭から離れない。


ドキドキする胸を押さえて、ゆっくりと深呼吸すると、ちょうどエレベーターのドアが開いた。


自宅までの廊下がやけに長く感じる。


俺はこのことを親に話すかどうか悩んだ。


弟が死んで、俺までおかしくなったと知ったら。


二人はどんな顔をするんだろう?


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