あの夏の季節が僕に未来をくれた
俺の泣く姿を見て、母は何度も謝った。


(そうじゃない!
謝らなきゃいけないのは俺の方だ)


俺だって今、母を泣かしてるっていうのに……


(先に謝られたら、謝れないじゃないか)


しばらくの沈黙のあと、俺はようやく口を開いた。


「母さん……

俺の方こそごめん……

あいつのこと、隠れて思い出さなきゃならなかったの……俺のせいだよね?

そんな風に……謝らせちゃって……ほんとごめん」


いろんな意地とかプライドだとか、そんなものを全て取っ払って。


俺はやっと母に謝ることが出来た。


なんだか胸につかえていたものが、きれいに取れた気がした。


素直になるって難しいことだけど。


素直になると、こんなに気持ちが楽なんだと思えた。


驚いた顔で見上げる母を、俺はにっこり笑って見下ろした。


(あぁ、なんだ……

もっと早くこんな風になれたら良かったのに……)


「母さん、もう隠さなくてもいいよ?

俺、大丈夫だから……

息子が死んだんだから、悲しむのは当たり前だし

もし俺が死んだとしても、おんなじように泣いてくれるんだよね?」


< 177 / 248 >

この作品をシェア

pagetop