あの夏の季節が僕に未来をくれた
葬式にはたくさんの人が参列してくれたけど、いろんなことが真しやかに囁かれていたのを知っている。


もちろん、本気で弟を偲んで来てくれた人もたくさんいたけど。


やっぱりいろいろ詮索されるのは、辛かった。


そういう意味で家族水入らずでこの日を迎えられて良かったと思う。


それに、今日はあいつを本当に送り出す、特別な日だから。


もし、今もどこかでこの様子をあいつが見てるなら、伝わるだろうか?


もう大丈夫、お前が心配しなくても俺はちゃんと生きていくからってメッセージが……


これからも悩んだりつまづいたりすることはあるだろうけど、俺はもうそれをお前のせいにはしない。


自分の未熟さだと受け入れて、考えて、悩んで、それで結論を出せばいい。


だから安心してゆっくりそっちで過ごしていいよって弔いの言葉をかけてやりたかった。


住職さんが引き払ったあとも、俺たちは三人でしばらく仏壇を囲みながら思い出話に花を咲かせた。


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