あの夏の季節が僕に未来をくれた
それでもまだ父にどう思う?なんて気にする母を見て、俺は仕方なく言ったんだ。


「大丈夫、あいつちゃんと好きな人いたよ?」


「えっ!そうなの?」


「そうなのか?」


母だけならともかく、さっきまで母をバカにしたように話してた父までが反応したことに、俺は可笑しくなった。


やっぱりああは言っても息子の恋愛事情は気になるらしい。


(言っても……いいよな?)


俺はそう弟に確認を取りながら、きっとあいつならいいよって言ってくれるんじゃないかって、心のどっかで思ってた。


何でも両親に話してたあいつが、唯一言わなかったこと。


そして唯一、俺だけが知ってること。


ま、中学の頃の乱れようはさすがに黙っててやろうとは思ったけれど。


興味津々な顔で、俺が口を開くのを待つ父と母の期待に応えるように、俺は話し始めた。


あの受験の日の、先生との出会いを……


学校が違ってからも連絡を取り合ってたあいつと先生の、悲しくて短い恋の話を……


きっと一生に一度、経験するかどうかの、純粋に引かれあう二人の想いを……


< 215 / 248 >

この作品をシェア

pagetop