あの夏の季節が僕に未来をくれた
最初は驚いたように聞いていた佐伯が、手で顎を触りながら、何か思い出しているような仕草を見せた。


「どうしたんだよ?

なんか心当たりとかあるわけ?」


俺がそう聞くと、ようやく合点がいったように話し始めた。


「お前が進路のことで親父さんに失望して、俺に相談したときあったろ?

……その前の晩遅くにお前から電話もらったんだ」


「電話……?」


「お前、それ覚えてないだろ?」


確かに電話した覚えはない。


そもそも俺たちはメールのやりとりはたまにあったけれど、今まで電話をしたことがないはずだった。


「今、考えると……

あれってお前の弟だったのかもな?」


きっとそれは間違いなくあいつの仕業で……


あのとき俺がもしかしたらって思っていたことが、当たっていたことに笑みがこぼれた。


まったく……


あいつはどこまで俺に過保護なんだよ……


そう思いながらも、あいつが親父とのことを心配してくれてたんだってことが、なんだかすごく嬉しかった。


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