あの夏の季節が僕に未来をくれた
「すごくお前のこと気遣ってたぞ?」


「えっ?」


「お前が電話のことまた忘れてるかもしれないから、確認してくれって言われたもん、俺」


「そっか……」


「その時はなんでそんなこと言うんだろうとか思ったけど、今思えば全部お前のためだったんだな?」


「……そうかもな」


一度認めてしまえば、新たな事実も余裕で受け止められる。


その年の短い夏の出来事は、俺にとって忘れられない大事な思い出になった。


それから毎年、命日には俺1人で墓参りに出かける。


そして佐伯は毎年、その頃になると連絡をくれて、同じ台詞を吐くのだ。


まるで俺がちゃんと墓参りに行くかどうか確かめるように……


もう大丈夫なんだと言っても、佐伯は全然信じてくれなくて、心配性なところは弟にそっくりだ。


まるであいつの代わりに俺の側にいるんじゃないかと錯覚してしまうほどに……


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