あの夏の季節が僕に未来をくれた
「や、実は奈々がさ~」


奈々ちゃんは佐伯の大事な妹。


お兄ちゃんが大好きで、俺が遊びにいってもくっついて離れなかったくらいだ。


だけどだんだんと俺にもなついてくれるようになって、自分にも妹が出来たみたいで嬉しかったっけ……


「ん?奈々ちゃんがどうかした?」


「うん……お前に会いたいんだとさ」


「なんか相談でもあんのかな?

兄貴が聞いてやんないんだろ?」


からかうようにそう言うと、佐伯の声はさらに真面目になる。


「そういうことじゃなくてさ……

お前のこと……気になってるみたいで」


「は?気になってるって?
俺、なんかしたかな?」


「おっ前…――」


佐伯の声に少しだけ苛立ちが混じってるような気がして、俺は焦った。


「え?俺、なんか変なこと言った?」


「……もういい」


はぁ~という大きな溜め息と共に、佐伯がそう言った。


「とりあえず、明日待ってっから!

奈々もお前に話したいことあるみたいだから

よろしくな?」


佐伯はそう言い放って、俺の返事も待たずに電話を切った。


(いったいなんなんだろう?)


俺にそんな疑問だけを残して。


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