あの夏の季節が僕に未来をくれた
保健室に着くと、先生は俺をベッドに座らせた。


それから冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、はいと手渡してくる。


ありがとう、と小さく言いながらそれを受けとると、蓋を開けて一口だけ飲んだ。


「大丈夫?」


あの時と変わらない瞳で俺を覗きこむと、彼女は心配そうにそう聞いてくる。


まだ少しだけ息苦しさが残っていたため、俺は首だけ縦に振って大丈夫だと伝えた。


それがまだ大丈夫ではないと判断したんだろうか?


先生は立ち上がって傍に来ると、そっと両肩を押して俺をベッドに横たわらせた。


俺の体を横たえると、震えていた手を優しく握って安心させるようにもう片方の手を乗せてくる。


少しひんやりした細い指が俺の手を包み込むように握られていて、理性を失いそうなほど胸が高なった。


「なんか俺、先生に押し倒されてる」


そんな思いを隠すように、わざと冗談ぽくそう言うと、彼女は瞬時に顔を赤くしてものすごい勢いで俺から遠退いた。


「なっ、何言ってんの!?」


相変わらず何も考えずに体が先に動くタイプの彼女に苦笑しながら、俺から遠ざかってくれたことに安堵する。


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