あの夏の季節が僕に未来をくれた
だって、あれ以上近くにいられたら触れてしまいそうでヤバかった。


自分の魅力に無頓着な彼女は、その瞳で、唇で、匂いで、俺を犯していることに気づいていない。


反応してしまいそうな俺自身を何とか抑えながら、俺は自分がさっきの発作からだいぶ回復していることに気付いた。


「そんなこと言えるくらいだから、もう大丈夫みたいね?」


真っ赤な顔だった彼女はもう余裕の笑みを浮かべてる。


それからまた俺に近付いて顔を覗きこむと


「うん、顔色も戻ってきた」


と言って嬉しそうに微笑んだ。


「俺、すみれちゃんのこと好きかも」


ふいに思ってもみなかった言葉が口をついて出た。


俺、何言ってんだ……


若干焦りながら狼狽えていると、彼女は特に気にするようすもなく、さらりと答える。


「私もあなたのこと、嫌いじゃないわ

結構イケメンだしね?」


天然なのか、わざとなのか……


彼女はそう言って舌をペロリと出してウインクをした。


その瞬間、さっきまで抑えようと思っていた自分の気持ちを、彼女にぶつけたい衝動にかられる。


俺を子供扱いする彼女に、子供だけど子供じゃないことを教えたくなる。


ちゃんと男なんだと刻み付けたくなった。


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