麗しの彼を押し倒すとき。



家を出て、これから通うことになる“愛蘭高校”を目指す。

私の足取りは、さっきと比べて軽かった。

結局私が親と離れ日本に残ることに、心配症の父が出した条件は、先に一人暮らししていた“兄と一緒に暮す”ことだった。


兄は転勤で学校を転々とするのは面倒だと、高校1年の時から一人暮らしをしていて、そんな兄が選んだ高校は偶然にも、私達が子供のころ父の転勤が始まる前に住んでいた場所にあった。


ちなみに私がさっきまで膨れていたのは、少し計画が崩れてしまったからだった。

何もないあの田舎にも、私が1年ほど暮らした女子校があった。

友達だっていたし、それなりに生活にも慣れて来た頃だった。

だからあの場所で一人暮らしでもして、高校を卒業しようと思っていたのに。



「はぁ、めんどくさい」


また1から何もかもやりなおすのだと思うと、心底面倒だ。


< 11 / 162 >

この作品をシェア

pagetop