麗しの彼を押し倒すとき。


面倒だ、けど。

私って本当に単純なんだなって思う。


実は愛蘭高校は柚羅の出身校で、お兄ちゃんの出身校ならと私も迷うことなくこの高校に決めた。

柚羅にはあまり勧められなかったけれど、制服だって可愛いし、極端なアホ校でもない。



「ふふっ…みんなびっくりするかなぁ」


少し散り始めた桜を目で追いながら、さっき柚羅から言われた言葉を思いだす。


「あいつらも通ってるんだよ。ほら、柚季小さい頃よくつるんでただろ」


“あいつら”そう言われて、この辺りで思い浮かぶのはあの子たちしかいない。

泣き虫な凪ちゃん、大人っぽい波留ちゃん、照れ屋な椿ちゃん、かわいいなっちゃん。

私が小さい頃、それこそ転校する小学2年生まで毎日のように遊んでいた幼なじみ。

みんな大好きだった。もちろん、今だって。



「可愛くなってるんだろうなぁ…」


本当にまだこの街にいるなら、再会は実に9年ぶりくらいだ。


< 12 / 162 >

この作品をシェア

pagetop