ヤンヤンデレデレ


「どう切ろうか迷っちゃって……」


切らなかったという誉に怒ることはせず、逆にそれでいいんだと、包丁を持つ。


「俺がやるよ。指切ったら大変だし」


誉がやりたいと言うからその意見を優先させたが、心配はあった。


「指を切ったら、血が出て、痛い思いもするし、痕が残るかもしれないからね。調理は危険なことだから、無理して誉がやることはないんだよ」


「それだったら、瑞希さんも包丁持って危ないです」


「大丈夫、俺は指を切らない」


「料理上手だからですか?」


「誉が泣くから」


切るわけにはいかない手が、ケーキの切り分け作業に移る。


均等に線引きされていくケーキを見ながら、おおーと拍手でもしそうな歓声を上げる誉。こんなことでと、こそばゆくも嬉しい瑞希の唇が緩む。


< 96 / 307 >

この作品をシェア

pagetop