鐘つき聖堂の魔女


たとえ家賃の代わりといっても、ライルも働いていて、疲れているのは一緒にもかかわらず何もしないのは気が引けた。

けれど、料理が出来ない自分が台所に入ってもライルの負担が増えるばかりではないのか、逆に邪魔をしてしまうのではないか、などと不安ばかりが先行して何もできていない。



(不格好でもいいからせめてこれくらいおいしい料理がつくれたらな…)


リーシャはお皿に盛られた食事を口に運びながら思った。



そういえば、いつにもまして今日の料理はおいしい。

魔女たちに出される食事は、ロードメロイや宮殿で働く者たちの残りもので作られており、厨房に入る料理人たちもまるで素人の者たちばかりで、あまり料理が上手いといえたものではない。

しかし、今日はどうしたことだろう。一口大のジャガイモとニンジン、ブロック状の豚肉が甘辛く味付けされた煮物のようなものはライルが作るものと同じくらいおいしく感じる。

今までは気にならなかったのに、そう感じるのもライルの手料理を食べるようになって本当においしい食事を食べるようになったからだろう。

リーシャは出された料理をゆっくり確かめるように咀嚼する。

これはなんという料理だろうか。誰が作ったのだろうか。これなら自分にも作れるだろうか。

次々に浮かぶ好奇心は止まらず、ついにリーシャは決意する。




料理を教えてもらおう――――


今まで食事はハーバー夫妻の店に世話になっており、一度も自分でしようとは思わなかったにもかかわらず、これは大きな心境の変化だとリーシャ自身も思う。


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