鐘つき聖堂の魔女
こんなにもあからさまな態度を取られると、否が応でも魔女は畏怖の対象なのだと思い知らされる。
咄嗟に逃げを打つ少女の手を離すまいと力を入れると、少女はますます怯えた表情になる。
早く誤解を解かなければ本末転倒だと焦ったリーシャはなるべく笑顔を心がけて口を開く。
「あの…突然声をかけてごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの。大丈夫、何もしないから」
少女は依然として怯えているものの、物腰の柔らかいリーシャの声色に少女は少し警戒を弱めた。
「あなたと少しお話がしたいだけなの」
「……おはなし?…わたしと?」
鈴の鳴るような可愛らしい声でたどたどしくそう口にした少女にリーシャは笑顔で頷いた。
何故自分なのだろうか。少女は戸惑いを隠せなかった。
「少しでいいの。だからお願い…手を放しても逃げないでいてくれる?」
懇願するように呟いたリーシャに少女は一瞬迷った後、厨房と食堂とを仕切る壁を確認して小さく頷いた。
「ありがとう!」
リーシャは少女が承諾してくれたことを嬉しく思い、すぐに手を放した。
少女は約束通りその場にとどまり、リーシャの様子をうかがう。
「あの…お話ってなんですか?」
「少しっていったから率直に聞くけど、今日の食事、あなたが作ったの?」
「どうして…ですか?」
少女が不安そうにそういった。作ったものに文句をつけられるのではないかと思っているに違いない。
けれど、その怯えようがリーシャを確信に至らせた。