鐘つき聖堂の魔女
「やっぱりあなたが作ってくれたのね。今日の食事はいつもと違っていてとってもおいしかったから、作ってくれた人とお話したくて」
「ほ、本当ですか?おいしいって本当ですか?」
リーシャの正直な感想にパっと表情を明るくさせ、前のめりにそう聞いてくる少女。
頬を紅潮させ興奮するその様子にリーシャは少し驚きつつも、少女の表情から怯えの色が消えたことを嬉しく思った。
「もちろん。ここにきて初めてあんなにおいしい料理を食べた気がする。あれはなんという料理なの?」
「料理名は特にないんです。残りものの食材を集めて煮込んだだけですから……あ…っごめんなさい」
リーシャは少女が何故謝ったのかすぐに分かった。
「謝らないで。魔女に残りものが回ってくるのはしょうがないことだから。むしろ、残りものであんなにおいしい料理を作れることがすごいと思う」
「ありがとうございます」
少女は胸をなでおろし、はにかむように笑った。
「私まだ見習いなんですけど、今日はちょうど担当の人がお休みで…皆さんに食事を作る機会をいただいたんです。今日は皆さんの反応が気になって、とってもドキドキでした」
「私も周りを見ていたけど、皆残さず綺麗に食べてたわ。きっとあなたの料理がとてもおいしかった証拠よ」
それはお世辞でもなく、社交辞令でもない。少女の料理は心からおいしいと思わせてくれるものだった。
「そうだと嬉しいです」
少女が見せてくれた笑顔に、リーシャはこのタイミングだと思った。