鐘つき聖堂の魔女


その後、リーシャはモリアを離れ、地図を頼りに東部にあるメリアーデの家に向かった。



道すがら、リーシャは店主の言葉を思い出していた。

たまたま休日が合ったとしても、一緒に過ごすという約束はないため、良く考えていなかった。

浮気といわれても、ライルとの関係に浮気という言葉を持ち込むこと自体おかしいことだ。

お互いが好きなように休日の時間を過ごすのだからライルが何をしていようが、それに口を出す権利はリーシャにない。

けれど何故だろう。ライルが別の女性と一緒にいる姿を頭に思い浮かべると、胸がきゅっと締め付けられるようで苦しい。

これはきっと優しくされるのに慣れてしまったせいかもしれない。

あの優しさが自分だけのものではないことを自覚しなければ益々深みにはまりそうだ。

大事なものを得るたびに手放すときの反動は大きい。

ライルがいなくなった時、その別れに耐えることができるのだろうか。

また一人と一匹の生活に戻った時、温かい生活を忘れることができるのだろうか。




そんなことを悶々と考え、気づけばメリアーデの家についていた。

メリアーデの家は平屋で外から見ると他の家と変わらない普通の造りをしている。

質素だが温かみのある扉を押すと、ふわりと良い香りが鼻をくすぐった。



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