鐘つき聖堂の魔女
「リーシャに触るな!」
ジャンは大声とともに跳躍し、ロネガンの腕に噛りつく。
子供といえど顎の力の威力は半端ではなく、歯形が残る位には込められた力にロネガンは思わずリーシャの頬を掴む手を離した。
「クッ…このクソガキが!」
リーシャがロネガンから逃れたことに安堵したのも束の間、ロネガンから振り下ろされた手がジャンの頬を直撃する。
遠慮のない殴打は鈍い音を立てて襲い掛かり、ジャンの小さな身体がその重さに揺らいだ。
「ジャン!」
リーシャの悲鳴が広場に響く。
老夫婦は先ほどまで穏やかだったロネガンが豹変したことに怯え、男たちはあの厭らしい笑みを湛え、傍観者を決め込む。
いつしか喧騒は止み、皆の注目はリーシャとジャン、そしてロネガンに集まっていた。
「おいクソガキ…俺を怒らせるなよ」
「な、なんだよ!お前が悪いんだ。リーシャが怖がってるだろ」
「ハッ…怖がる?この女がか?」
ロネガンは鼻で笑ってそう吐き捨てた。
「いいことを教えてやろう。ついでだからお前らも見ていけ。良いものが観れるぜ」
まるでショーでも始めるかのようにのびのびと両手を広げ、観衆に向かって大きな声を上げるロネガン。
リーシャはジャンを支えながら胸がざわつくのが分かった。
「何をするかは分からないけどやめておいた方があなたのためよ。三年前と同じ目に遭いたくないなら私たちをほっておいて」
「馬鹿かお前は。俺が何の策なしにこんな啖呵を切ると思うか?三年前の俺と同じだと思うな」
ロネガンはそういって不敵な笑みを浮かべたかと思えば、不意に上着の右ポケットから何かを取り出す。