鐘つき聖堂の魔女
「見たところ街の者のようじゃが、お前さんもリーシャに用事か?」
「いいえ。俺は同居人です」
予想外の答えが返ってきたことにオリバーは目を見張った。
「ほお、リーシャが人と一緒に暮らしているとな。珍しいこともあるものだ」
「その口ぶりだとあなたはリーシャが魔女だと知っているようですね」
「あぁ、知っとるとも。あの子が子供のころからの付き合いじゃからな」
オリバーの朗らかな笑みを見るかぎり、オリバーとリーシャの関係は良好そうで、ライルは少し警戒を解いた。
「お前さんもリーシャが魔女だと知っておるのか?」
「先ほど、リーシャの思わぬ形で知りました」
苦虫をつぶしたようなライルの表情に、オリバーはリーシャの身に何が起こったのか大体の経緯を察した。
「それでリーシャに逃げられたわけか」
まるでまたかと言わんばかりの物言いにライルはすぐさま反論した。
「逃げられたわけではありません。…ただ、リーシャは気持ちの整理ができていないだけです」
「お前さんはどうなんじゃ?あの子は普通の女の子ではない。魔女の血が流れている者を人と思えるか?」
「リーシャは普通の女の子ですよ。ちゃんと人の心を持っているし、思いやりもある。魔法を使うのを見せたのも今日が初めてでしたし、人に危害を加えるものでもありませんでした。魔女を迫害するのはこの国の歴史がそうさせているんだ」
わざと挑発的な言葉を吹っ掛けられ、試されていると分かっていたが止められなかった。