鐘つき聖堂の魔女


その方向がまっすぐ首都モリアに向かっていることに安堵し、再び東に向かおうとした時だった。

何の予兆もなくライルが振り返り、まっすぐリーシャの方向を見上げた。



「ッ!」

リーシャは咄嗟にフードを手繰り寄せて口元まで覆う。

そして、一目散にその場を去った。

モリアの入口付近まで目にもとまらぬ速さで飛んできたリーシャはやっと速度を緩める。




(なんで気づかれたの?)


リーシャは内心焦っていた。

ドルネイが国境警備のために敷いている索敵魔法が張られているならまだしも、ただの人間に気付かれることなどまずありえない。

偶然にしては振り返る動作に迷いがなかったし、魔女を目の前にしてあの落ち着き様は首を傾げるものがある。

森を抜け、いつしかモリアの居住区へ入ったリーシャは眼下の光景を見て自分の考察があながち間違いではないのではないかと思う。

もし魔女が飛んでいたなら、今リーシャを見つめる人々のように恐怖や嫌悪を見せるはずだと。




(まさか魔女の存在を知らないということはないだろうし…けど、だとしたらなぜ…)


悶々と考えていたリーシャがふと気づくと目的地が目の前に近づいていた。



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