鐘つき聖堂の魔女


「いや、可能性ならもう一つある」

ニヤリと口の端を持ち上げて笑う様は自信に満ちており、誰もがごくりと生唾を飲んで答えを待つ。

我慢しきれないアリエラが「それは何ですの?」とロードメロイに猫なで声で擦り寄る。

ロードメロイはアリエラの頭を撫でながらその答えを口にした。



「消魔石だよ」

それは真っ先に浮かぶようで浮かばない盲点だった。

消魔石とは魔法の力を打ち消すことができる石のことをいい、その石は山奥でしか採ることができない。

消魔石は魔法に対抗しうる数少ない方法の一つであるが故に、非常に希少価値が高く、市場に出回っているものはとても高価な値段で取引されている。

しかし、消魔石の採掘山は実質国が独占しており、入山するには許可証が必要であるため一般市場には出回らないはずだ。

そのため、閣議の間に集まった人々の誰もが捕獲魔法消滅が消魔石によるものだという考えに至らなかったのだ。




「とすると、侵入者は数名がかりで仕掛けた魔法を破るだけの強力な消魔石を所持していたということ?」

「場所が場所なだけにそれもあり得るやも…国境山のヴォルヴィア山では消魔石が眠っているとの噂があるようですしな」

やや緊迫感のましたアリエラの疑問に、ヴァイスは慎重に答えつつもその顔に不安はない。

おそらく消魔石があろうとなかろうとヴァイスには関係がなく、ただ純粋に戦いに身を置くことができることを楽しみにしているのだろう。

しかし、ドルネイの国主であるロードメロイは慎重だった。



< 34 / 180 >

この作品をシェア

pagetop