鐘つき聖堂の魔女


「陛下もこんな老いぼれの命を奪おうとは思わん。老い先短い命を哀れに思って聞き流してくれるじゃろう」

「体はそんなに悪いんですか?」

「心配せんでもまだ現役じゃ」

オリバーは明るくふるまうも、リーシャの表情は曇る。

オリバーは持病の心臓病を患っていた。

これは魔術師であることが少なからず関係している。

魔術師とは本来人間には持ちえない魔法を術式を介して発動するが、これには魔術師自身の身体にも負担がかかる。

そのため、魔術師として活躍しているのは若者が多いのだ。

そんな中オリバーが未だ魔術師として国に仕えていること自体無理がある。

当然、体への負担もかかっており、持病も相まってこれまでも何度か医者にかかっていた。

そのたびにオリバーは大丈夫だというが、年々医者にかかる回数も多くなってきているし、休む期間も長くなってきている。

きっと今だってあまり体調が良いとはいえない気がする。

もう引退して隠居生活をおくってもらいたいのだが、オリバーはそれをよしとしない。




「陛下のたった一人の世話役がおらんようになったら誰があの坊主を止める?アリエラは陛下に篭絡されておるし、臣下は話にならん」

これがオリバーの口癖だ。ロードメロイを“坊主”と言えるのもオリバーだけ。

オリバーから見ればロードメロイは坊主なのだろうが、先帝の代から帝国に使え、ロードメロイが赤ん坊の頃から世話役をしているから言えることなのだろう。

普通の人なら、裏でこんな呼ばれ方をしているとロードメロイに知られれば、まず先はない。


< 67 / 180 >

この作品をシェア

pagetop