あなたのキスで世界は変わる
どこか嬉しそうな先生に気持ちがいっきに冷めていく。
…探さなきゃいけない時期になったのかもしれない。先生の代わりを。
私を愛してくれる人なんかこの世界にひとりもいなくて。
私を必要とする人も先生以外いなくて。
そんな唯一の存在である先生だって、あの女がいれば私なんかいらないの。
先生があの女から愛されれば私はもう用無し。
だから、いつか捨てられるかもしれない…って不安は消えない。ずっといつも隣り合わせにあるもの。
「小川…なんかあった?」
「…ううん、なんもない…」
そんな顔しながら心配するなんて、なんてデリカシーのないひと。
ムカつくひと。
普通の顔をしているはずなのに、先生の顔が少し微笑っているように見える。やっぱり大好きな人に会えるのは嬉しいよね。
だから。
抱きしめてとか言えないな……。
キスしてとも言えない。
先生に汚い私の匂いが移ったら可哀想だものね。
好きな人に会うんだから、野良猫の匂いはついてない方がいい。
優しいでしょう?
私にも醜い優しさが残ってたみたい。
残酷な、残酷な優しさ。