天使みたいな死神に、恋をした
ってことはなんだ、私はその手伝いをやらされるってわけか。アンジュラがかっ捌いてくる亡霊の処理的なことを私もやるのか?
一緒にいるってそういうことなのかもしれない。
私だけ何もしないであのおいしい紅茶みたいなもんを優雅に飲んでいるなんてわけにはいかないんだよねきっと。
「翠さんはそんなことはしませんよ。それは私の仕事」
「アンジュラ?」
「きっと私と一緒に居たほうが翠さんは安全ですし、笑顔でいられると思いますよ」
「それはそうかもしれないけどでもダメだよ」
「行きましょう」
いくらこの死神の体が細いって言っても……いや細いじゃなくて骨か。そこはやはりあれだ。死神だ。
掴まれた手首は動かない。逃げられない。何も出来ない。そして冷たい。
「あと3時間もすれば完全にこっち側のモノになります。今は迷ってしまうでしょうが、完全に意識が体から離れてしまったらそんな気持ちは無くなりますから安心して下さい」ひとつ頷く。
確かに、サークルの仲間たちは帰りたいなんて一言も漏らさなかったし、私のことすら忘れてた。
行くべき道を知っていて、そこに向かって進んでいるだけだった。
ってことは、こっちにいたら生きていた頃の自分や友達や家族なんかのことは忘れちゃうってことなのかな。
亮のことも、忘れちゃうのかな。
忘れたくない。忘れちゃダメなような気もする。絶対に心の中に置いておかなきゃダメなような、そんな変な気持ちになった。そのくらい大切な人なのかもしれないって、そう思う私がまだ、ちゃんといた。