天使みたいな死神に、恋をした

 アンジュラに両腕を掴まれ動きを塞がれる。

 真っ白い顔に不気味に光るサメみたいな目。牙。葡萄のような爪。


 怖い。


「何やってんの? ちょっと放してって」

「このまま私と一緒に帰りましょうか」

「ちょいちょいちょいちょいちょい。アンジュラ待ってタイムタイム」

 性格いいなんて思った私がバカだった。

 ぜんぜん違うかもしれない確率88%。たぶん。

「こんな浮気男と一緒になっても悲しむだけですよ。それだったら私とこちらの世界にいた方が幸せってもんです。私はあなたしか見ませんし、もう死ぬこともない世界ですから、言ってみれば∞です。無に等しい」

「死んだ後は無になるってこういうことなわけ?」

「あなたの場合は」

「違うことも起こりうるの?」

「私の家の前で見たでしょう? あれはあのあと炎の海に投げ込まれ、死にます」

「また死ぬの?」

「ええ。永遠に生きて永遠に死にます。そしてまた繰り返す恐怖に耐えられなくなって」

 なって何?

 あの炎の海の底に沈む。

 そしてそこで死ねないままに恐怖と苦しみを味わいながら、狂っていく。

 そんなことを言ってた。
 そんな恐ろしいことを聞いたら身の毛もよだつってもんだ。

 ちゃんと、しっかり生きようなんて頭の片隅に置いてみたり。
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