葉桜~late spring days
 「奏太のことだから、気にしないということはきっと無理だと思う。思いださないようにしようと意識すればするほど近くに感じ取ってしまうのかもしれないな。戻りたいよな、あの頃に。」

 去年は大和がいてくれたから助かった。いなかったら、高校入学という変化も重なって、おかしくなっていたかもしれない。でもあの時の一言で、いろいろなことから吹っ切れた自分がいた。

拓人を忘れる事は一生無い。それでいいんだ。きっと拓人にかかわっていた人はみんなどこかで同じ想いなんだ。そう思えた。そこから僕の高校生活がきちんとスタートしたような気がする。無駄にしたとは思わないけれども、考え事の前で動けなくなる自分の性格が少しだけ嫌になった。

それから1年経った今年はというと、また別の要素が重なって精神的なバランスを取るのが限界に来ている。こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。誰かを好きになるなんて、それが拓人にどこか似ている女の子だったりするなんて。
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