葉桜~late spring days
 「山田さんだっけ?同じ部活の。手、振ってたけど、奏太、あの子と付き合ってんの?」

 先週、たまたま乗った帰りの電車で、大和にばったり出くわし、そして突っ込まれた。大和には隠せなかった。付き合ってはいないけど、本当は付き合いたい、どうにかなりそうなぐらい、好きだということ。

 告白しちゃえ、と言われたけれども、理由を話したら黙ってしまった。そりゃ、僕だって、拓人の兄の大和だったとして、同じことを言われたら黙るかもしれない。「拓人と似ている」なんて言われたら。

 「分かっているんだ。拓人じゃないって。性格とか行動とか、何となく似ているだけで、全部が全部拓人と一緒じゃない。拓人じゃないって十分分かってる。分かってるけどさ……どうしても怖いんだよ。突然この世からいなくなるってわけじゃない。でもいなくなったらって、妙なことが頭をよぎるんだよ」

 晴香は、拓人じゃない。

 だから、突然病気になって、またいなくなったりすることは早々にはない。
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