葉桜~late spring days
 駅 まではそんなに遠くないけれども、合奏後のクタクタ状態の私にとっては、ちょっとした苦行だ。誰か話し相手がいるとちょうどいい。特に凹んだ部活の後の話 相手が奏太だと、駅に着くまでに気が晴れることが多い。

 話の中身は他愛もない、世間話だったり、今日の合奏の話だったりするのに、駅に着くころには落ち込んだ気持ちが晴れている。たぶん、どこかで、浮上させるカギを知っているのかもしれない。そういう話をうまく見つけて、今日はこういう方向かなとか察しているのかもしれない。こういうことできるって、すごいよなー、女の私が見習えよと思うぐらい。

 いいやつだなって思う。

 話が途切れて、やや間が空いて、ふと溜息をついたところだった。

 「ところでさ、晴香、明日、暇?」
 「え?」

 ちょうど目の前をトラックが通り過ぎて、今聞こえた言葉が本当なのか、よく分からなかった。

 「だから、明日の日曜日、暇かどうか聞いたんだけど。」
 「明日?特に予定ないから暇だけど?」

 いつもふわっとニコニコしている奏太が、その時は妙に真面目な顔をしていた。

 「ちょっとさ、付き合ってもらっていい?」
 「え?」
 「一緒に行ってほしいところがあるんだけど。」
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