葉桜~late spring days
 「言ってほしいな。」
 
 晴香がビクッとして僕の顔を見た。

 「うそ。」

 ほっとして油断した晴香の手に、キスをした。

ビックリした晴香が、口をパクパクしていた。ちょっとやりすぎたかな。でも昨日から落ち着きのない気持ちでいた晴香に、ちょっとでも元気が出たらなと思った。

というか、本当はキスしたかっただけだけれども。
 
 「おまじない。午後も頑張れるように。」
 「あ…あり、がとう。」

 どぎまぎした顔の晴香に、言うかどうか悩んで、やっぱりお願いしてみた。

 「ごめん、おまじない、してくれる?」
 「えぇぇぇ!」
 「誰か来ちゃうよ。」
 「…えっと…」
 
 誰もいないのに、きょろきょろ見回したあと、恥ずかしそうに、僕の手にキスをしてくれた。

 「ありがと。残りの授業、がんばれそう。」

 キスをもらった手を晴香に見せて笑った。晴香は恥ずかしいのかうつむいて、僕の方をなかなか見なかった。
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