葉桜~late spring days
 「こんな待ち受けでいいのかよ、女子高生。」
 「いいんだよ。」

 そう言った晴香は、まっすぐに僕を見ていた。優しいのに、まっすぐで、嘘のない視線。

 「私ね、ずっと見ないフリしてた。それでいいと思ってた。というか、その方がいいと思ってた。」
 
 分かってた。心の中で答えた。

 「でもね、昨日葵ちゃんと電話で話してて気がついたんだ。
  見ないフリをしていても、気がついたら、奏太のかけらをずっと手の届くところにおいていたんだ。私の行動は他の人から見たら、逃げているだけに見えることだったみたい。」

 僕は話している晴香の手をとって、そっと握った。柔らかい、少し小さくて白い晴香の手のひらを、両手でそっと包んだ。晴香がうつむいて、重ねた手をじっと見ていた。

 廊下を数人が走っていく足音がした。そろそろ昼練をするやつが来るかもしれない。晴香の顔をそっと覗いた。
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