黄昏に香る音色
廊下を、

夕陽が、ただ赤く染めていた。

渡り廊下の入口である校舎は、実験室とかがある普段は、授業があるとき以外は、人はいない…寂しい校舎だった。

特に、渡り廊下と繋がっている階は、体育倉庫のようになっていた。


顔をそむけて、抵抗する明日香を、

夕日が赤く、染めた。

あまりの眩しさに、反射的に、目を細めてしまう。

その時、

風が吹いた。

風が吹くことはない、廊下に、

強い風が。

それは、明日香には、優しく、

高橋には、激しかった。

「うわあっ!」

高橋の体が、吹っ飛んだ。

明日香の上から、離れた。

明日香は、体を起こし、

夕陽の輝きに、目を細めながら、

明日香のそばに立つ、人影を見上げた。

「ああ…」

嬉しさから、言葉にならない。

高橋に、近づく男の影の中に、

明日香は包まれた。


明日香の頬に、安堵の涙が流れた。



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