黄昏に香る音色
渡り廊下に、姿を見せた時から…

優一の姿…

しぐさに、

明日香は微笑んだ。



優一は、ゆうだ。

明日香は、嬉しくなった。

(完全に、ゆうは消えた訳じゃない)

滲んできた涙を、我慢し、

明日香は、優一に、もう一度、姿勢を正し、敬礼した。

「ゆう先生、お元気で!」

明日香の笑顔に、

優一も笑いかける。

「香月さんも、お元気で」



その笑顔にたまらなくなり、明日香は口を開いた。

「先生!あたし…音楽やってるんです…」

明日香は、優一を見つめ、少し言葉を詰まらせ、

改めて、微笑んだ。

「いつか…いつか!聴きに来て、下さいね」

「ああ、ぜひとも」

明日香は、背を向けた。

涙が、溢れそうになったから。

必死におさえ、

「さっきのメモに、メルアド書いてます。いつか連絡下さい!じゃあ、ゆう先生!お元気で!」

明日香は振り返り、頭を下げると、

急いで、階段を駆け下りた。

もう駄目だった…。

涙が溢れ、

流れ、止まらない。

優一に、涙を見せる訳にはいかなかった。

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