黄昏に香る音色
アパートに帰り、ほとんど何もないけど、身支度を整えた。

ほとんどが、里美と共有のものだから、

明日香のものは、服とトランペットくらいしかない。

歌詞を書き留めた紙を、楽器ケースにしまうと、

明日香はいつのまにか、

寝てしまった。




朝の日差しの眩しさに、目をやられ、夢からさめると、

テーブルにうつぶせになっていた明日香に、布団がかけられていた。

明日香は身を起こし、家の中を確認すると、

窓の横に、里美が壁にもたれ、座っていた。

里美は、じっと明日香を見つめていた。

「里美…」

里美は顔を背け、

「帰るんだろ…」

明日香は姿勢を正し、

里美の方に、体を向け、

「うん」

そして、頷いた。


「やっと…だな…。自信は、ついたのか」

「うん。自信というか…決意ができたから…」

「じゃあ…。さっさと帰れ!ここは、もうあんたのいるべき場所じゃない」

「里美…」

里美は立ち上がり、

「さっきと行け!明日香!」

明日香は、テーブルの横においてあった楽器ケースを、手に取った。

服が詰まった鞄も、持とうとしたら、

「これは、実家に送ってやるからさ!とっとと、啓介さんのもとへ…帰りやがれ!」


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