黄昏に香る音色
いつもの如く、

放課後はやって来る。

明日香は、渡り廊下に来た。

南館から飛び出すと、綺麗な雲一つない空が、オレンジ一色に染まっていた。

明日香は思い切り、深呼吸をした。

視線を空から、普段の高さに、真っ直ぐ戻すと、

体育館よりの手摺りに、寄りかかる少年の姿が、飛び込んできた。

山の方から、吹き降りてくる風に、髪を靡かせながら、

少年は、静かにグランドを見つめている。

結構…髪が、風で舞い上がっているのに、少年は気にせず、ただグラウンドだけを見つめている。

明日香は、唾を飲み込むと…少年を見ないように、意識しながら、南館の入り口近くの手摺りに…もたれることにした。

グラウンドでは、いつのように、サッカー部が練習し、

取り巻きの声援も、聞こえる。

いつもより強い風の吹き付けに、明日香は髪を押さえた。

少年と明日香を包んで、風は…吹き抜けていく。

直ぐに、止むと思った風はなかなか止まず、

やっと風がおさまり、明日香が、髪を押さえていた手を外した瞬間、

「…さん」

明日香の耳に、声が飛び込んできた。

「何?」

明日香は、声がした方を見た。

少年が、明日香に微笑んでいた。




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