黄昏に香る音色
武田と原田は、目をつぶっていた。

「最後に…俺達は、すべてを捨てて、ここにいるのに…まだ辿り着かないとな」

夕陽が沈む。

「あいつらは、最後には…自分達の命も捨てたのさ」

阿部は叫んだ。

「だから、俺は何も捨てない!俺は、大切な人の為に、音楽をやるだけだ!捨てないと、音楽ができないなんて、うそだ」

阿部は、涙ぐんでいた。

「観客もファンも大事だ。だけど…本当に大切なのは、自分のそばにいる人だ」

阿部は、涙をぬぐい、

「本当に、大切な誰かがいるから…音楽を知らない人に、きかせられるんだよ」

阿部の叫びは、

どこか悲壮だった。

阿部は、啓介を睨むように、見つめ、

「啓介!俺達を連れていけ!今の俺達なら、どんなやつにも負けないぜ!」

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