黄昏に香る音色
「おじさん?」

「俺達だったら、明日香ちゃんに合わせられる。誰よりも、彼女のバックで、成長を見てきたのは…俺達だ。いや、啓介。お前だってそうだろ」

啓介には、阿部の言葉は信じられなかった。

「でも…おじさん達は…絶対、ここから動かないじゃないか」

「それは…俺達がダブルケイのメンバーだからだ」

原田が口を開いた。

明日香は驚いた。

知り合って長いが、原田の声なんて、あまりきいたことがない。

続けて、武田がしゃべる。

初めてきくかもしれない。

「大樹以外…俺と原田、井守、そして、健司と恵子で、ダブルケイだ。健司が去った後も、俺達は同じ仲間だった…井守は、音楽をやめたが…俺達は、恵子がいつでも歌えるように…そばにいたのさ」

井守は、Evilのマスターだ。


阿部は山を見上げ、

「俺も…兄に対抗する為に、アメリカに留学してたんだぜ。ロサンゼルスだがな」

「おじさんが!」

啓介は、初めて知った。

阿部はゆっくりと、頷いた。

「お前が産まれる前の話さ…。兄貴に勝ちたかったから…俺は、自分を磨く為アメリカに留学した。ニューヨークにしなかったのは、ウェストコースのジャズが…俺に合ってると、感じたからだ」

阿部は、店を見た。

「ある日…行きつけのライブハウスに、顔を出したら…驚いたぜ。ステージに兄貴がいた…安藤理恵の隣に。訳が分からずに、ライブ終了後、楽屋にいくと…兄貴は、俺を見て、ただ一言…」

阿部は、遠くを睨み、

「気楽だなと、言いやがった」

皆、阿部の話をただ聞いている。


夕陽が沈みかけている。

「ステージでは、わからなかったが、近くで見ると…随分痩せていた…。ここで何してる、姉さんは?…ときいたら…また一言だけ」

阿部は唇を噛み締め、

あの時を思い出す。

「捨てたよとな」
< 383 / 456 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop