黄昏に香る音色
店を終え、
恵子は、一人マンションに帰ってきた。
鍵をあけると、電話が鳴っていた。
慌てて取ると、啓介だった。
「母さん、元気にしてる」
「うん。元気にしてるわよ」
恵子の声の調子が、元気そうなので、啓介はほっとした。
「ちゃんと病院いってる?」
「いってるわよ。毎日」
恵子は、嘘をついた。
「もうすぐ発表がある。何とか、いけそうだ」
「そんな簡単に、取れるものじゃないわよ」
「取れるさ!ここ半年以上、俺は持てる力のすべてを使って、演奏してるんだぜ」
「誰だって、いつでも全力よ。それでも、たどり着かない…」
「大丈夫だよ」
「どうして?」
「和美に、明日香もいる」
恵子はしばらく無言になり、
「そうね。かずちゃんと明日香ちゃんがいれば…大丈夫かもね」
「俺だけじゃ、だめなのかよ」
恵子は笑った。そして、真剣な言葉で、
「あんたは天才よ」
「わ、わかってるんだったら、心配するなよ。絶対取るから、母さんの息子が」
「そうね。取れるわね」
「俺だけじゃない。明日香も和美も、母さんの娘だからな」
「わかってるわ。みんな…あたしの子供よ」
恵子は、目をつぶった。
「ごめん…母さん。大変なときに…そばにいなくって…ごめん」
啓介の言葉が止まる。
しばらく無言になる二人。
恵子は、目をつぶり、クスッと笑った。
「わかってるわよ。あんたが、アメリカに行ったのは…かずちゃんの為だけじゃなくて…あたしの為でもあるんでしょ」
遠い昔…。
あたしと、啓介だけだった時代から、
あんたは優しかったから…。
恵子は、一人マンションに帰ってきた。
鍵をあけると、電話が鳴っていた。
慌てて取ると、啓介だった。
「母さん、元気にしてる」
「うん。元気にしてるわよ」
恵子の声の調子が、元気そうなので、啓介はほっとした。
「ちゃんと病院いってる?」
「いってるわよ。毎日」
恵子は、嘘をついた。
「もうすぐ発表がある。何とか、いけそうだ」
「そんな簡単に、取れるものじゃないわよ」
「取れるさ!ここ半年以上、俺は持てる力のすべてを使って、演奏してるんだぜ」
「誰だって、いつでも全力よ。それでも、たどり着かない…」
「大丈夫だよ」
「どうして?」
「和美に、明日香もいる」
恵子はしばらく無言になり、
「そうね。かずちゃんと明日香ちゃんがいれば…大丈夫かもね」
「俺だけじゃ、だめなのかよ」
恵子は笑った。そして、真剣な言葉で、
「あんたは天才よ」
「わ、わかってるんだったら、心配するなよ。絶対取るから、母さんの息子が」
「そうね。取れるわね」
「俺だけじゃない。明日香も和美も、母さんの娘だからな」
「わかってるわ。みんな…あたしの子供よ」
恵子は、目をつぶった。
「ごめん…母さん。大変なときに…そばにいなくって…ごめん」
啓介の言葉が止まる。
しばらく無言になる二人。
恵子は、目をつぶり、クスッと笑った。
「わかってるわよ。あんたが、アメリカに行ったのは…かずちゃんの為だけじゃなくて…あたしの為でもあるんでしょ」
遠い昔…。
あたしと、啓介だけだった時代から、
あんたは優しかったから…。