ヒミツの恋【短編集】

ネクタイ

『…何考えてたの?』






背後から、それも渉の息遣いが感じられる程の近い距離で声をかけられて、ビクっと体が跳ねて、我にかえった。





『…俺と一緒の時は、他の事なんて考えないでくれる?』






耳元で囁くように渉が話しかけてくる。






ゾクッと気持ちの良い刺激が体を支配した。






「…出会った頃を思い出してたの。渉の事しか考えてないよ?」






ドキドキし過ぎて、背後にいる渉を振り返る事も出来ずに答える。





その答えに満足したのか、体を少し離す気配を感じた。





ようやく振り返ることが出来て渉を見つめる。






『出会った頃?どうして今頃?』






呆れたような口調の割に嬉しそうに笑う渉。






目を細めて笑う渉の顔が好き…





普段こんな顔で笑ってる所なんて見たことないもの。




私の前で…私にしか見せない渉の笑顔…





それだけで胸が締め付けられる程、好きという気持ちがまた大きくなる。
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