素敵彼氏の裏の顔
「ねぇ」
金髪の言葉は、別の声に打ち消される。
甘くて、妖艶で、それでいて敵意すら感じるその声。
あたしは、甘い蜜のようなその声を先ほど聞いたばかりだった。
鼓動が速くなる。
胸がぎゅっと締め付けられる。
出来ることなら、この場から消えてしまいたいとさえ思った。
「達也君、余計なこと言わないでくれる?」
コツッ……
ヒールで地面を踏む音がする。
怖くて……
自分の醜さを認めるのが怖くて、
あたしは下を見る。
そんなあたしに女は……利枝は容赦なく近付き、あたしの顎に手を当てた。
そして、ユリのようなその細い腕からは想像出来ないほどの力で、ぐいっとあたしの顔を持ち上げる。