僕と彼女の秘密の物語。


昼時を過ぎた食堂は、人もまばらだった。

一時新入生の溜まり場と化していたけれど、だいぶ落ち着いてきたようだ。


周りには数組のグループが雑談したり、1人でiPodで音楽を聴いたり、レポートを仕上げている者もいる。


僕は自販機でコーヒーを買うと、お気に入りの隅の窓側の席へ移動した。


そしてカバンからレポートの教材を広げる。


自分の家より、何故か不思議とここの方が断然はかどる。

図書館や実習室じゃ静か過ぎて逆に落ち着かない。




レポートの半分くらいに差し掛かったころ。


固まった背中を軽く反って大きく伸びをした時、ふと離れた席に彼女の姿を見つけた。


彼女は友達数人と談笑していて、その中には男の姿もあった。


一瞬視線がぶつかったが、彼女はすぐに逸らした。

何もなかったかのように、友達と談笑を続ける。


“あの時”以外は、彼女と僕は大学構内で会っても特に言葉を交わさない。


お互い、他人のフリをする。


別にそうしろと言われたワケではないけれど、

例えばこういう時、僕はあえて彼女に話しかけたりはしないし、

彼女の方も僕に話しかけては来ない。


別にそれがおかしいとか、

ましてや寂しいだなんて思っているわけではない。






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