僕と彼女の秘密の物語。
すぐ扉の向こうに、人の姿が見えた。
薄暗くて、顔まではハッキリ見えないが長い髪と体格から女性の方だ。
男は一体どんなやつ……
さらに中をのぞき込もうとした、その時。
「うわっっ」
ドタタッ
足元に置いてあった古い布切れが足に絡まり、前に倒れかかった僕は勢いよくドアに腕をついた。
(や、やば………)
しんと静まりかえる。
顔が青ざめていき、その場から動けなくなった。
「…誰…?」
その時、中から声がした。
女の声だ。
てっきり、真っ先に男の方が飛び出してくると思っていた。
しかし次の瞬間、目の前の扉があく。
「ご、ごめん!
誰かいるなんて知らなくて!」
慌てて頭を下げて謝るが、目の前の相手は何も言わなかった。
僕は恐る恐る顔を上げる。
目の前には、女の子が立っていた。
(あ……)
予想外にも、そこに居たのは知っている顔だった。
というか、この大学の男ならほとんど知っているかもしれない。