哀しみの音色
だけど大学で見た彼女とどこか違って見える。
あの時見た彼女は、どちらかというと冷たい印象。
でも今目の前にいる彼女は、とても悲しい印象だった。
「いつから聞いてたの?」
「……数分前…くらいから……」
「そっか。全然気づかなかった」
「歌……うまいね」
俺の言葉に、彼女は一瞬目を見開いた。
だけどすぐに目線をそらすと……
「……ありがと」
一言つぶやいた。
「だけど……」
勝手に口が開く。
言わなければいいことまで、言ってしまう。
「すごく哀しい声だ……」
その言葉に、彼女は驚くこともせず、目を伏せただけだった。